最近、自分の周りで、自宅サーバーを始める方が増えてきました。
自分も自宅サーバーを稼働させているのですが、今回はサーバーについて今まで勉強してきた中で、始めるにあたって最低限気を付けたいことをまとめてみました。
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OSやファームウェアのアップデートは可能な限りこまめに行う
LinuxやWindows、サーバーを構築するにあたって、必ず何かしらのOSをセットアップするかと思います。
このOS、人間が作っているためどうしても何かしらのバグが出てくる可能性があります。
このバグですが、場合によっては権限のない利用者に対して管理者の許可なくサーバーを操作する手段を与えてしまう”脆弱性”になる可能性があります。
大抵の場合、これらの脆弱性は、開発元が定期的に修正したものを配信しており、それを受信・適用する”アップデート”機能が必ず備わっていると思います。
普段使っている、使うときにしか電源を入れない”クライアントPC”は通常直接インターネット上に公開されていない上に、ネットワーク上にその存在があるかどうかも調べなければ外部からは分からないので、アップデートをさぼっていてもすぐにやられる可能性はまだ低いですが、サーバーの場合はインターネットからいつでもアクセスできる状態である上、その存在もネット上に一般公開されているため、だれでも簡単に接続できます。したがって、脆弱性が見つかったら直ちにパッチをあてないと侵入されてしまう危険性が出てくるのです。
ただ、実際のところ、パッチを適用する際にOSの再起動が必要になることも少なくありません。
実際に運用する際は、アップデートの有無を定期的に確認するようにし、もし再起動の必要のない更新がある場合はすぐに適用、もし再起動が必要なものについてはあらかじめメンテナンス日時を決めておき、利用者に通知したうえで適用するようにするといいと思います。
OS以外にも、使用しているネットワーク機器(ルーターなど)や、仮想環境で使っている場合はホストマシンのOSやハイパーバイザーのアップデートなども併せて確認しておきましょう。
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メールの不正中継対策を行う
自宅のサーバーでメールサーバー(SMTP)を建てる場合、特に注意しないといけないのはメールの不正中継対策です。
例えば、自分のサーバーでSMTPサービス(postfixやsendmailなど)を立ち上げ、外部からアクセスできるような状態にしている場合、SMTPサーバーから認証なしにメールを送信できるようにしていると非常に危険です。
スパムメール業者などは、使用しているメールサーバーから大量に迷惑メールを送信している関係上、各メールサービスプロバイダからブロックされやすい為、常にブロックされていない新たなメールサーバーを探している可能性があります。
もし不正中継対策をしていないSMTPサーバーを公開してしまうと、こういった業者に、迷惑メールやウイルスメールなどの送信に使われてしまう可能性があります。
もし上記のようになってしまった場合、たとえ自分が送ったわけではないことが証明できたとしても、社会的信用を失ったり、場合によってはその責任を求められる可能性が出てきます。
パソコンが「踏み台にされる」という表現を目にすることがあります。踏み台にされると何が起きるのか、またどんな対策をすればいいのか教えてください。 – マルウェア情報局
対策として、自分のSMTPサーバーを認証なく利用できないように設定しておくと、不正中継を防ぐことができます。
【図解】初心者にも分かるメールの仕組み(SMTP、POP、IMAPの違い) – SEの道標
また、自分のサーバーが不正中継されない設定になっているかテストができるサイトがあります。
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火事に注意
こちらは技術的な話からは離れるのですが、自宅で24時間PCを動かしていると、サーバーマシンが壊れた際に火事になるリスクがあるようです。
ノートPCをサーバーにして大惨事になった話 – VPS比較メモ
危険なのはノートPC、UPSなどのバッテリーを積んだ機器を使って稼働させている場合。
特にノートPCは持ち運びできるようにするために筐体を小さくすることに重点を置いて設計されており、長時間動作させることはあまり想定されていないようです。
そのため、サーバーのような24時間稼働させるような使い方をすると熱がこもり、バッテリーの爆発や中にたまったほこりなどに引火して火事になってしまうことがあるようです。
一方、デスクトップPCの方も火事になることはあまりないようですが、電源周りがショートして中で火花が飛ぶ、といったことが起こる可能性はあるようです。
自作PCからの出火が原因で火事になる確立はどのくらいでしょうか?- Yahoo!知恵袋
こちらもやはり、定期的なメンテナンスを設けて、ほこりの除去などの定期的な手入れをした方がよさそうです。
また、監視ツールなどを使ってハードウェアの状態を常に監視しておくことも有効かもしれません。
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最後に
自宅サーバーの稼働には確かにリスクがあります。
それ故に「VPSなどを使えば事足りるし、安くて安全だし、自宅にサーバーを置くべきではない」という論調も目立ちます。
しかし、実際のところは、ガッツリサーバーを利用したい場合はVPSはかなり高くつきます(例えば、1TBのストレージを使おうと思ったら、自鯖ならHDDを追加すれば済みますが、VPSやクラウドの場合は月額でだいたい1万弱かかります)し、ハード構成やネットワークも含めて、一から自分で設計・構築ができるのはかなり魅力だと思います。
また、データはすべて自分が管理しているマシンの中に納まっているので、業者の不手際による情報流出や情報の不正利用のリスクを防ぐことができます。
ちなみに、有名なITニュースサイト Gigazine は、自分たちの発信する情報に対して圧力がかかっても公開が停止させられることがないように、という理由で、敢えてオンプレミスで運用している、という例もあります。
海外にディザスタリカバリを複数箇所設置 – Gigazine
自宅サーバーとクラウド(VPS)、どちらが優れているのかはそのままオンプレミスかクラウドか、の議論に発展していくわけですが、個人的にはこの議論はナンセンスだと思っています。
クラウドもオンプレミスも一長一短があり、どの形態が適しているのかは自分がどういったサービスを建てたいのかで決まってくるからです。そしてその選択肢として、クラウド(VPS)も自宅サーバー(オンプレミス)いずれもなり得えるということです。
また、どちらを選んだとしても、ネット上に自分の環境を公開することはリスクを伴います。そのリスクに対してどう対応していくか、考えていくのも勉強の一つだと思います。
普段何気なく利用しているWebサイトやWebサービスですが、その裏側がどうなっているのかを知ることはとても面白いです。
自分が構築したインフラやコンテンツが、インターネットを通じて全世界の人に見てもらえることの楽しさを、ぜひ多くの方が体験出来たら素敵だな、と思っています。